月経と産後の出血

記事 トピックの説明
題名: 月経と産後の出血
言語: 日本語
執筆者: ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー
翻訳者: サイード佐藤
校閲者: ファーティマ佐藤
Publisher: 海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)
概要: 女性特有の問題である月経と産後の出血などを、タハーラ(清浄)の観点から取り上げていきます。
更新された日付: 2007-11-30
リンク: http://IslamHouse.com/64640
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9月経と産後の出血

     月経とは:子宮からの自然出血で、決まった時期に女性器から排出されます。大方の場合、その期間は67日間です。

     月経による出血の実態:

アッラーは、母の体内にある子供の栄養補給ゆえに、月経の血をお創りになられました。それゆえ妊婦は殆ど月経の出血を見ません。そしてアッラーは、出産後にそれを乳房から流れる乳に変えられます。それゆえ授乳する女性は殆ど月経の出血を見ません。そして女性が妊娠や授乳を終えた時にその行き場がなくなり、それが子宮に留まる結果、毎月67日間に渡って排出されることになるのです。

     月経には決まった最短期間というものも、最長期間というものもありません。また最も早い開始時期というのも、最も遅い開始時期というものもなく、あるいは月経と月経の間の決まった最短期間とか最長期間というものもありません。

     産後の出血とは:出産後、あるいはその最中、あるいはその前に女性器から見られる出血のことです。

● 産後の出血の期間は大方の場合、40日間です。しかしそれより早く出血が収まって清浄な状態になったら、グスル[1]をしてサラー(礼拝)やサウム(斎戒)などをします。また夫と性交することも出来ます。一方その出血が60日間を超える場合、その出血は不整出血と見なされます。

 妊婦の出血に関する諸規定:

妊婦が流産していないにも関わらず多量の出血を見たら、それは不整出血であり、ゆえにサラーなども休止してはなりません。そのような場合は各サラー前にウドゥー[2]するようにします。また妊婦が自分自身の決まった時期と月と状態において通常の月経による出血のような出血を見たら、それは月経です。それゆえそのような場合はサラーやサウムを休止しなければなりません。

     月経と産後の出血のある者は、清浄な状態になりグスルするまでは、タワーフ[3]をすることが禁じられます。

     月経と産後の出血のある者は、カバーなどの覆いを通してでなければクルアーンに触れることが出来ません。

     女性は月経の状態にある限り、それが通常通りの期間であっても、あるいは通常よりも長かったり、あるいは短かったりしても、サラーなどはしません。そして清浄な状態になったらグスルをし、サラーなどを始めます。月経中に出来なかったサウムは後でやり直しますが、サラーに関してはやり直しする必要はありません。

     女性は必要に応じ、月経を止める作用のある無害な薬品を摂取することが出来ます。そしてその間は清浄な状態にあると見なされるので、サラーもサウムをしなければなりません。

     月経が終わった時の兆候:

 月経の出血が止まると、白色の液体が見られます。もしそれが見られない場合、白い木綿などを挿入して出血がないかどうか確かめます。

     おりものに関する諸規定:

 月経期間内のおりものは、月経による出血と見なされます。そして月経期間外のそれは月経による出血ではないので、サラーもサウムも性交も行うことが出来ます。もしおりものが平均的な女性の月経期間を超えたらグスルをし、清浄な状態にある時のようにサラーなどをします。

     規定のサラー時間に入った後に月経になったか、あるいはサラーの時間前に清浄な状態になったりしたら、そのサラーは彼女にとって義務となります。産後の出血の場合も同様です。

     男性が、月経中の女性と(下半身を覆う)衣服の上から(性交に至らない範囲での)性交渉を持つことは許されています。マイムーナ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は月経中の彼の妻たちと(下半身を覆う)衣服の上から(性交に至らない範囲での)性交渉を持ったものでした。(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[4]

     月経中の妻と交わることについての見解:

月経中の妻と性交することは禁じられています。

 至高のアッラーはこう仰られました:-そして(人々は)あなたに月経について訊ねる。言え、「月経は穢れであるから、月経中の女性と交わるのではない。そして彼女らが清浄な状態になるまで、(性交のために)近づいてはならない。しかし(彼女らが)清浄な状態になったら、アッラーがお許しになられた範囲において彼女らと交わるのだ。」アッラーは実に(罪から)よく悔悟する者たちと、(汚れから)よく身を清める者たちを愛でられる。,(クルアーン2222

     月経の出血が止まり、清浄な状態になる‐つまりグスルする‐までは、性交することは禁じられます。月経の出血が止まっても、グスルする前に性交することは罪です。

     自らの妻が月経中であることを知りつつ、故意にかつ自発的に彼女と交わる者は罪深い者です。そのような者は男女共に悔悟し、その贖罪をする必要があります。贖罪とは:月経中に性交した場合には1ディーナール[5]、出血が終了した後でグスルする前であった場合は半ディーナールの施しです。

イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は月経中の妻と交わった男に対して、こう言いました:「1ディーナールか半ディーナール施すのだ。」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[6]

     月経中は性交、離婚、サラー、サウム、クルアーンに触れること、タワーフ[7]、モスクに留まることは禁じられます。

     ムスタハーダムスタハーダとは、月経期間中でない時に性器内部から出血を見る女性のことです。

     月経とイスティハーダ(月経期間以外の性器内部からの出血)の違い:

1-月経は子宮の基底から分泌される血液の流出のことで、その色は濃く黒ずんでおり、粘り気があります。また悪臭があり、排出されても凝固しません。

2-一方イスティハーダによる出血は:子宮外からの出血のことで、その色は赤く、粘り気はありません。また通常の出血ゆえ悪臭はなく、排出された時に凝固します。

     ムスタハーダのグスルの仕方:

 ムスタハーダは月経が上がった後、1度だけグスルをします。そして各サラー前にウドゥーをし、陰部にナプキンなどを当てておきます。

 ムスタハーダには4つの状況があります:

 1-本人が自分の月経期間を心得ている場合。その期間を過ごした後にグスルし、サラーなどを始めます。

 2-本人が自分の月経期間を心得ていない場合。女性の平均的な月経期間を見積もって67日間過ごします。そしてそれからグスルし、サラーなどを始めます

 3-周期的な月経があるものの、自分の月経の出血とそうでない出血を見極められない場合。月経に特徴づけられる出血が終了した時点で、グスルし、サラーなどを始めます。

 4-周期的な月経がなく、また自分の月経の出血とそうでない出血を見極められない場合、67日間過ごした後にグスルし、サラーなどを始めます。

     流産に関する諸規定:

卵細胞の排出は月経とも産後の出血とも見なされません。4ヶ月以降の胎児の流産の際に見られる出血は、産後の出血とみなされます。また、まだ胎児としての形が形成されていない凝血の段階、あるいは肉塊の段階に流産した場合、例え出血が見られたりしてもそれは産後の出血とは見なされません。また既に胎児としての形成が見られる3ヶ月以降の凝血の段階、あるいは肉塊の段階に流産した場合、それは胎児として認められるゆえ、その際の出血は産後のそれと見なされます。

     ムスタハーダはサラーやサウム、イァティカーフ[8]などのイバーダ(崇拝行為)に勤めることが出来ます。アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、ファーティマ・ビント・アビー・フバイシュ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)にこう尋ねました:“私はムスタハーダで、清浄な状態が(全く)訪れません。私はサラーを放棄することになるのでしょうか?”すると(預言者は)言いました:“いや、それは普通の血である。あなたが(以前)通常の状態にあった時に月経の出血を見ていた日数分だけサラーを休止させ、その後にグスルをしてサラーをしなさい。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[9]

     大きな穢れ[10]の状態にある男性、また月経中や産後の出血、あるいは大きな穢れの状態にある女性はクルアーンを(触れることなく)読むことが出来ます。しかし清浄な状態になった時に読む方がよいでしょう。

 


[1] 訳者注:詳しくはこの章の「7.グスル」の項を参照のこと。

[2] 訳者注:詳しくはこの章の「4.ウドゥー」の項を参照のこと。

[3] 訳者注:「タワーフ」は巡礼(ハッジとウムラ)の諸義務行為の内の1つ。アッラーを崇拝するためにカアバ神殿の周囲を7回逆時計回りに廻ります。

[4] サヒーフ・アル=ブハーリー(303)、サヒーフ・ムスリム(294)。文章はムスリムのもの。

[5] 訳者注:1ミスカール(約4.25g)に相当します。

[6] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(264)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(237)、スナン・アン=ナサーイー(289)、サヒーフ・スナン・アン=ナサーイー(278)。文章はアン=ナサーイーのもの。

[7] 訳者注:「タワーフ」は巡礼(ハッジとウムラ)の諸義務行為の内の1つ。アッラーを崇拝するためにカアバ神殿の周囲を7回逆時計回りに廻ります。

[8] 訳者注:詳しくは「5.サウム」の章の「4.イァティカーフ」の項を参照のこと。

[9] サヒーフ・アル=ブハーリー(325)、サヒーフ・ムスリム(333)。文章はアル=ブハーリーのもの。

[10] 訳者注:「大きな穢れ」とは、精液の発射、性交、月経や産後の出血などによって陥る状態のことです。

関連項目 ( 1 )
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