الوقف
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23-ワクフ(継続的サダカ)
● ワクフとは:偉大かつ荘厳なるアッラーからの報奨を望みつつ、何らかの財産を基金とし、その利益のみを慈善として施すことです。
● ワクフが定められたことに潜む英知:
ワクフは、アッラーがその物質的状況を豊かなものにして下さった裕福な者が、それを通じてかれに対する服従行為に精進し、またかれへのお近づきの原因となるような善行において切磋琢磨することを奨励してくれます。
そしてワクフとはつまり、自分の財産が誰かその管理・維持に長じないような者の手に渡ることを恐れ、その元本が残存するような類の財産を基金とし、その利益のみが継続するようにすることです。
● ワクフの法的位置づけ:
ワクフは推奨されており、至高のアッラーが勧められた最善のサダカ(施し)の内の1つであるとともに、最も偉大かつ利益が大きく広範に行き渡る善行の1つでもあります。そしてまたそれを行った者は、その死後に至ってもその報奨を受け続けるのです。
アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「人は死んでしまえば、もう(報奨の対象となる)行いをすることが出来ない。但し次の3つは別である:(つまりそれは)継続するサダカ(つまりワクフ)、または人を益する知識、あるいは(その死後も)彼のために祈ってくれる正しい子息である。」(ムスリムの伝承[1])
● ワクフが有効となるための条件:
ワクフが有効となるためには以下の条件を満たさなければなりません:
1-ワクフとする対象が明白で、かつその元本や本来の形が残存したまま利用可能であること。
2-モスクやアーケードのワクフ化や、ワクフの対象を親戚や貧困者にすることなど、何らかの慈善に関連していること。
3-ワクフの対象を「モスク」などの方面や、「何某」などの個人、あるいは「貧者」などの種類といった形で特定すること。
4-ワクフに期間を定めたり、何か別の物に関連付けたりしないこと。但しワクフに本人の死を関連付けることに問題はありません。
5-ワクフを行う者が、物事の管理運営における責任を有していること。
● ワクフの成立:
ワクフは「何某をワクフとします」とか「何某を寄付します」とか「何某を慈善として施します」などといったような口頭表現で成立します。
またモスクを建てて人々にそこでのサラー(礼拝)を許可したり、また墓地を作って人々に遺体の埋葬を許可したりなど、ある種の行為によっても成立可能です。
● ワクフの対象:
ワクフの対象を全ての者としたり、またはある対象に優先権を与えたり、またそこにおいて優先順位を付けることなどに関しては、イスラーム法に反しない範囲でそれをワクフとした者の条件に沿って行います。
一方、もしそれをワクフとした者が特に何の条件も定めていなかった場合は、イスラーム法に反しない限り当地の慣例や習慣に従って運営をします。そして対象に関しても、全ての者が平等に利益を被るように取り計らいます。
● ワクフとする対象の条件:
ワクフとする対象は不動産や家畜、農園や武器、家具など、合法的かつ永代的に利用出来る物であることが条件付けられます。
またワクフとする対象は、自らが所有する物の中でも最もよい物であることが推奨されています。
● ワクフはいかに言付けられるか:
イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「ウマルはハイバルの役で土地を獲得しました。それで彼は預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のもとを訪れると、こう言いました:“私は今まで手にしたこともないような貴重な財産‐土地を得ました。一体それをどのように利用すべきでしょうか?”(預言者は)言いました:“望むならそれ自体をワクフとし、それをもってサダカ(施し)とせよ。”それでウマルはそれを施しました。そしてそれ自体が売却も贈与も相続もされないようにし、(そこからの生産物やその利用を)貧者や近親の者、奴隷の解放やアッラーの道に奮闘する者、客や旅人へと当てました。またその管理に携わる者が節度をもってその利益から食べることと、彼が豊かではないその友人にも食を分け与えることを許しました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[2])
● ワクフに関する諸々の法規定:
1-ワクフがある集団内の特定の者たちを対象にしていたら、そこから生じる利益は彼らの間に均等に行き渡らなければなりません。そしてもし特定の者たちが対象にされていなかったら、その場合は均等である必要もなく、またその利益をその中の一部のみに限定することも許されます。
2-ワクフがまず子息を、そしてそれに次いで貧しい者を対象にしていたら、その利益は男女の子息及びそれ以下の卑属に分配されます。尚その際、男子は女子の倍の量を受け取ります。
そしてその中に所帯持ちや、困窮している者、自ら稼ぐ能力のない者や、あるいは宗教的に真面目な者などがいたら、彼らに優先的に利益を分配しても問題はありません。
3-もし「このワクフは私の息子、あるいは私の息子たちの何某へのものです」と言った場合、子息の内女子を除いた男子のみがワクフの対象となります。但し「バヌー・ハーシム(ハーシムの息子たち:ハーシム部族のこと)」という風にその表現で部族自体を意図した場合、女性もその中に含まれます。
● ワクフの利益が停止したら:
ワクフは遂行が義務付けられる契約であり、破棄・売却・贈与・相続・抵当などは出来ません。しかしワクフとした物が崩壊などしたためにその利益が消失してしまった場合、それをひとまず売却し、そしてその額で同様の物を購入しなければなりません。例えばモスクの場合、何らかの原因でその利益がなくなってしまったら売却し、それを別のモスクに買い換えます。これはワクフの福利を保護するためですが、もしそうすることによってある者に弊害や害悪が及ぶような場合は、その限りではありません。
● ワクフの形式の変更:
もしそうすることに福利があるのなら、ワクフの利益の一部が滞った場合にその形式を変更すること‐例えば住居を店舗にしたり、農園を住居にしたりなど‐が推奨されます。
またワクフの維持にかかる経費は特別な条件を定めていない限り、そこから生じる利益から賄います。
またもしそれがより優れかつ功利的で、更に至高のアッラーがより悦ばれると思われるのであれば、ワクフをした張本人の言付けに反することも可能です。
● ワクフの管理者:
ワクフをした者がその管理者を特定しなかった場合、もしワクフの利益の対象が特定されていたら、その者がその仕事を請け負います。しかしもしワクフがモスクであったり、あるいは「貧者」などその対象が特定不可能であったりした場合は、統治者や裁判官[3]がその管理に携わることになります。
● ワクフをするに最善な方面:
ワクフに最善な分野は、場所や時代を問わずムスリム一般にその利益が広く享受されるような所です。以下のような例が挙げられるでしょう:
① モスク
② イスラームの知識を学ぶ機関
③ 学生
④ 偉大かつ荘厳なるアッラーの道に奮闘する者
⑤ 親戚
⑥ 貧困や弱さの中にあるムスリム
⑦ 孤児や寡婦
⑧ 水飲み場や井戸
⑨ 農園や果樹園など
● ワクフは固定されてはいますが、そこから発生する利益の幾割かを利用して、それと同様の更なるワクフを施すことも可能です。
[1] サヒーフ・ムスリム(1631)。
[2] サヒーフ・アル=ブハーリー(2772)、サヒーフ・ムスリム(1632)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[3] 訳者注:イスラーム法で裁く統治者や裁判官のことです。そのような機関が存在しない非ムスリム国や地域に居住するムスリムは、そこにおけるイスラーム的権威である学者やイマームなどに依拠することになります。