การตะยัมมุม
8-タヤンムム
● タヤンムムとは:サラー(礼拝)などが出来る状態になることをニーヤ(意図)しつつ、両手で清浄な土地の表面に触れることです。
● タヤンムムは:イスラームのウンマ(共同体)独特のもので、水によるタハーラ[1]の代替物です。
● タヤンムムは水がない時や、その使用によって害を被るような時、あるいはその使用が不可能な状況にある時など水の使用が出来ない場合において行うことが許されます。また大きな穢れ[2]、小さな穢れ[3]のいずれにも適用することが出来ます。
至高のアッラーはこう仰られました:-信仰する者たちよ、あなた方がサラー(礼拝)をする時には、あなた方の顔と両腕を肘まで洗うのだ。そしてあなた方の頭を撫で、両足をくるぶしまで洗え。あなた方が不浄な状態にあるならば、(水で体を)洗い清めよ。そしてもしあなた方が病人や旅行者であったり、あるいは排泄したり、または女性と交わったりして水を見つけることが出来なかったら、清浄な土地の表面でタヤンムムするのだ。そしてそれでもってあなた方の顔と両腕を撫でよ。アッラーはあなた方に困難を与えられたいのではなく、あなた方を清浄にし、そしてあなた方にその恩恵を全うされたいのである。おそらくあなた方は感謝することであろう。,(クルアーン5:6)
● タヤンムムは清浄な土地の表面であれば、埃であれ、砂であれ、石であれ、はたまた湿った土であれ、乾燥した土であれ、行うことが出来ます。
● タヤンムムの形:
1-アブド・アッ=ラフマーン・ブン・アブザーがその父から伝えるところによれば、ある男がウマル・ブン・アル=ハッターブのもとにやって来て、こう言いました:「“私は不浄な状態にありますが、水がないのです。”するとアンマール・ブン・ヤースィルがウマル・ブン・アル=ハッターブにこう言いました:“私とあなたが旅路にあった時のことを覚えておいででしょう?(あの時水がなかったので)あなたは礼拝しませんでしたが、私はと言えば(砂の上を)転がって(それを清めの代わりとし)、それから礼拝しました。そして私がそれを預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に話した時、彼は「こうするだけでよかったのだ」と言って、両手で地面に触れ、そこに息を吹きかけてから顔と両手を撫でたのです。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[4])
2-アンマール(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、‐中略‐預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“このようにするだけでよかったのだ。”そして彼は両手で地面に触れ、(それから手に付着したものを)払い落とし、左手でもって右手の甲を、あるいは右手でもって左手の甲を撫でました。そしてそれから顔を撫でました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[5])
● もし1つのタヤンムムで2種類以上‐例えば大小の排便と夢精など‐の穢れの除去を意図するのなら、それで全ての穢れを除去することが可能です。
● タヤンムムをすることで、ウドゥー[6]によるものと同様のもの‐サラー、タワーフ[7]、クルアーンに触れることなど‐が許されます。
● タヤンムムは以下の物事により、無効となります:
① 水が見つかること。
② 水を使用出来ないという正当な理由‐病、水の必要性など‐が無くなること。
③ ウドゥーを無効にする物事の発生。
● 水も砂もない場合、あるいはそのいずれも使用することが出来ないような場合は、ウドゥーもタヤンムムもないそのままの状態でサラーします。そして後にそれらが見つかったとしても、そのサラーをやり直す必要はありません。
● タヤンムムは大小の穢れに対するタハーラの役割を果たしますが、身体に関するものであれ衣服に関するものであれ、物体としての汚物を除去するにはタヤンムムでは不十分です。それで汚物を除去することが出来なければ、その状態のままサラーします。
● 負傷し、水を用いることによってその部位に悪い影響が及ぶことを恐れる者は、その部分を撫でるだけにし、それ以外の他の部分はウドゥーします。もし撫でることすらも悪い影響を及ぼしそうであれば、その時はその部分にタヤンムムし、残りの部分はウドゥーするようにします。
● タヤンムムをしてサラーをし、その直後に水が見つかった場合にはどうするか?
アブー・サイード・アル=フドゥリー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「2人の男が旅行に出、サラーの時間が来ました。しかし水がなかったので、彼らは清浄な地面に触れてタヤンムムし、サラーをしました。すると2人はその直後に水を見つけました。それで1人はウドゥーをし直してサラーをし、もう1人はやり直しませんでした。それからアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のもとにやって来ると、2人はそのことを彼に伝えました。(預言者は)やり直ししなかった方の男に:“あなたはスンナ[8]に従った。そしてあなたのサラーには報奨がある”と言い、ウドゥーをしてやり直したほうの男には:“あなたには倍の報奨があろう”と言いました。」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[9])
[1] 訳者注:詳しくはこの章の「1.タハーラ」の項を参照のこと。
[2] 訳者注:「大きな穢れ」とは、精液の発射、性交、月経や産後の出血などによって陥る状態のことです。
[3] 訳者注:「小さな穢れ」とは、排便、放屁、熟睡や失神や酩酊などによる一時的な分別の喪失などによって陥る状態のことです。
[4] サヒーフ・アル=ブハーリー(338)、サヒーフ・ムスリム(368)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[5] サヒーフ・アル=ブハーリー(347)、サヒーフ・ムスリム(368)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[6] 訳者注:イスラームにおいて定められたある一定の形式における、心身の清浄化を意図した体の各部位の洗浄。
[7] 訳者注:「タワーフ」は巡礼(ハッジとウムラ)の諸義務行為の内の1つ。アッラーを崇拝するためにカアバ神殿の周囲を7回逆時計回りに廻ります。
[8] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。
[9] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(338)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(327)、スナン・アン=ナサーイー(433)、サヒーフ・スナン・アン=ナサーイー(420)。文章はアブー・ダーウードのもの。