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清算と秤
● 清算とは:アッラーがそのしもべたちを御前に侍らせ、彼らの現世での行いをお告げになると共に、それに応じた報いをお与えになることです。その際に1つの善行はその10倍から700倍、更にそれ以上にまで倍増させた形で計算され、一方1つの悪行はそのまま1つとして計算されます。
● 帳簿の受理:
アッラーの御前で、全ての者はその帳簿を与えられます。それを右手に受け取った者は幸福な者で、後ろ向きに左手で受け取る者は不幸な者なのです:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-人間よ、あなたはあなたの主へと向かって日々努力し、そしてかれとまみえる者なのである。それでその帳簿を右手に受け取る者は、その清算を易しくされるだろう。そして嬉々として(天国の)仲間の所へ向かうであろう。一方帳簿を背後から受け取る者は、その(来世での)破滅を悔いるであろう。それから燃え盛る炎の中に連れて行かれるであろう。,(クルアーン84:6-12)
2-至高のアッラーはこう仰られました:-一方帳簿を左手に渡された者はといえば、こう言う:「私の帳簿など渡されないほうが良かった。そして私の清算など知らない方が良かった。(現世での死で)全てが終わってしまえば良かったのだ。」,(クルアーン69:25-27)
● 秤が設けられること:
審判の日、被造物の行いの清算のために秤が立てられます。人々は1人1人清算に赴き、主は彼らの前世での行いについて訊ねられます。そして清算が終わると、現世での行いが秤にかけられます。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてわれら(アッラーのこと)は審判の日のために公正な秤を設けるゆえ、魂はいかなる不正も被ることがない。そしてからし種1粒ほどの重さ(の行い)でも、われらは提示しよう。われらは清算者として完全なのである。,(クルアーン21:47)
2-至高のアッラーはこう仰られました:-そして(善行)の秤が(悪行のそれより)重ければ、彼には歓楽の生活が待っている。そして(善行)の秤が(悪行のそれより)軽ければ、彼の住処は奈落である。そしてそれ(奈落)とは何であるか?燃え盛る業火である。,(クルアーン101:6-11)
3-イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこう言うのを聞きました:“審判の日、信仰者は偉大かつ荘厳なる彼の主にまかり出るが、(その際)アッラーは彼をお隠しになる。そしてアッラーは彼の(前世にて犯した)罪を告白させられる。それでこう仰られる:「(しかじかの罪を)知っているか?」彼は言う:「はい、知っています。」アッラーは仰られる:「われは現世において、あなたのためにそれらを隠蔽しておいたのだ。それでこの日、われはあなたを赦そう。」すると彼には善行の帳簿が渡される。一方不信仰者と偽信仰者は全ての被造物の面前で、こう告知される:「彼らはアッラーに対して嘘を捏造した者たちである。」”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[1])
● 審判の日に人々が訊ねられること:
1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなたの知識の及ばないものを追求してはならない。聴覚も視覚も心も、全てそれらは訊ねられることになるのである。,(クルアーン17:36)
2-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてその日(アッラーはかれを差し置いて何か他のものを崇めていた)彼らを呼んで、こう言う:「あなた方が(この日)援助してくれると思い込んでわが共同者としていたものは、どこにいるのだ?」,(クルアーン28:62)
3-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてその日(アッラーは人々に)呼びかけて、言う:「あなた方は使徒たちに対して、どういう受け答えをしたのか?」,(クルアーン28:65)
4-至高のアッラーはこう仰られました:-ゆえにあなたの主にかけて。われら(アッラーのこと)は彼ら全員を必ずや問いただすであろう。彼らが(現世で)していたことに関して。,(クルアーン15:92-93)
5-至高のアッラーはこう仰られました:-そして約束を守るのだ。それは問われることになるだろうから。,(クルアーン17:34)
6-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなた方はその日、必ずや(現世でおろそかにし、そこに執着していたところの)享楽について訊ねられよう。,(クルアーン102:8)
7-至高のアッラーはこう仰られました:-ゆえにわれら(アッラーのこと)は使徒を遣わした民と、使徒たちに尋ねよう。そして彼らに(彼らの間で何が起こったかを)知識をもって語り聞かせよう。われらは全てを監視していたのだから。,(クルアーン7:6-7)
8-アブー・バルザ・アル=アスラミー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこう言うのを聞きました:“審判の日、しもべはその月日を何に費やしたか、その知識でもって何をなしたか、またその財をどこから得て何に費やしたか、そしてその身体を何に消耗させたかを訊かれるまで、その足が落ち着くことはない。」(アッ=ティルミズィーとアッ=ダーリミーの伝承[2])
● 清算の方法:
審判の日、清算される者は2種類に分かれます:
1-易しい清算をされる者。それはつまり提示のことです。
アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によればアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“審判の日清算される者は皆、滅ぶ者たちである。”それで私(アーイシャ)は言いました:“アッラーの使徒よ、至高のアッラーはこう仰ったのではありませんか?-そしてその帳簿を右手に渡される者は、その清算を易しくされるであろう。,”するとアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“それは提示である。審判の日清算が議論の的になる者は全て、罰されることになるのだ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3])
2-厳しい清算をされる者。大小全ての罪を問われ、それを正直に認めればともかく、それに嘘をついて否定しようとしたり隠したりしようとすればその口に封印がなされ、彼の肉体が(彼自身の口に代わり)彼のしていたことを告白します。崇高なるアッラーはこう仰られました:-今日われら(アッラーのこと)は彼らの口に封印をする。そして彼らの手は彼らが得ていたものについて語り、足はそれを証言するのである。,(クルアーン36:65)
● 全ての者は清算を受けます:
審判の日の清算は、全ての者に及びます。ただ預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が例外とした彼の共同体からの70000人だけは別で、清算も懲罰もなしに天国に入ります。
● 審判の日、不信仰者たちは清算を受け、叱責の意味から現世での行いを提示されます。懲罰においての彼らの状況は様々で、多くの悪行を働いていた者の懲罰はそうでない者のそれよりも甚大なものとなります。また善行のある者に関しては罰が軽減するものの、彼が天国に入ることは決してありません。
● 審判の日真っ先に清算を受けるのは、預言者ムハンマド(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の共同体です。そして審判の日ムスリムが真っ先に清算されるのが、サラー(礼拝)なのです。それが良ければ残りの全ての行いも良く、それが悪ければ残りの全ての行いも駄目になってしまいます。また最初に人々の間で裁かれるのは殺人です。
● どのようにして秤にかけられるか?
審判の日、しもべの行いは良いものであれ悪いものであれ、秤にかけられます。そして善行が悪行に勝った者は勝利を手にしたのであり、悪行が善行に勝った者は破滅したのです。そして行いの主とその行いとその行いの帳簿は、全てしもべの面前で崇高なるお方の公正さを示すがために、秤にかけられます。そしてその日しもべの秤に最も重いものは、高徳なのです。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてその日秤は真実である。そして(善行の)秤が(悪行のそれより)重かった者たちは、(その報奨を勝ち取った)成功者たちである。一方(善行の)秤が(悪行のそれより)軽かった者たちは、われら(アッラーのこと)のみしるしに不正を働いて(信仰しなかったことで)自らを破滅させた者たちである。,(クルアーン7:8-9)
2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によればアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「審判の日肥ってこの上なく大きな男がやって来るが、彼はアッラーの御前においてハエの羽1枚ほどの重さもない。」そして彼(預言者)は言いました:「望むなら(クルアーンのこの句を)読むがいい:-それで審判の日、われら(アッラーのこと)は彼らに何の重みも見出さない。,」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[4])
● 不信仰者の行いに関して:
不信仰者と偽信者は「イーマーン[5]」という行いを受け入れられる条件を備えていないため、アッラーに近付くために行った行為や服従行為などいかなる善行も受け入れられることがありません。彼らの行いは風が強く吹き荒れる台風の日の灰のようなものです。そして審判の日、彼らは全被造物の前で「彼らはその主に対して嘘偽りを語っていた者たちである。」と告げられます。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてアッラーに対して嘘偽りをでっち上げた者たちよりも不正を働く者たちがいようか?彼らはその主にその行いを提示されることになるのである。そして証言者たちは言う:「彼らこそはその主に嘘偽りを語っていた者たちである。不正者たちにアッラーの呪が降りかからないことがあろうか?」,(クルアーン11:18)
2-至高のアッラーはこう仰られました:-その主に嘘偽りを語っていた者たちの行いは、風が強く吹き荒れる台風の日の灰のようなものである。彼らには彼らの稼いだもので何も出来ることがない。実にこれこそはただならぬ迷妄である。,(クルアーン14:18)
3-至高のアッラーはこう仰られました:-その日(不信仰者たちは、現世で預言者たちがその預言者性を証明するためにそうすることを要求していたところの)天使たちを目の当たりにする。その日不信仰者たちによき知らせはない。そして(天使たちは)彼らに言う:「あなた方は(天国を)禁じられている。」そしてわれら(アッラーのこと)は彼ら(不信仰者たち)の行ったものに赴き、それを粉々に飛び散る埃のようにしてしまう。,(クルアーン25:22-23)
● その日、人は自らの行いを目の当たりにすること:
審判の日、しもべたちの行いは提示されます。そして人はそれがいかに些細なものであれ甚大なものであれ、あるいは良いものであれ悪いものであれ、現世で行った全ての行いを目の当たりにすることになります。崇高なるアッラーは仰られました:-その日人々は自らの行いを目の当たりにするべく、散り散りになって出発する。それで小蟻1匹の重さほどでも善行を行った者は、(その日)それを目の当たりにする。そして小蟻1匹の重さほどでも悪行を行った者は、(その日)それを目の当たりにする。,(クルアーン99:6-8)
● 現世と来世における行いに対する報い:
アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“アッラーは信仰者に対して、その善行を1つたりともおろそかにしたりはしない。それにおいて現世でお与えになり、来世ではそれによってお報いになられる。一方不信仰者は、現世においてアッラーのために行った善行により糧を与えられはするが、来世に終着した時にはそれにおいて報われるための善行が1つたりともないのである。”」(ムスリムの伝承[6])
● 審判の日年少者はどうなるか?
信仰者の年少者たちは、信仰者の大人たちが人類の祖アーダム(アダム)の姿で天国に入るように、彼らもまた天国に入ります。一方不信仰者の年少者たちも天国に入ります。そして大人たちがそこにおいて結婚するように、彼らも結婚するのです。そして現世で結婚しないまま亡くなった者でも、来世では結婚することになります。天国において独身者はいません。
[1] サヒーフ・アル=ブハーリー(2441)、サヒーフ・ムスリム(2768)。文章はムスリムのもの。
[2] 真正な伝承。スナン・アッ=ティルミズィー(2417)、サヒーフ・スナン・アッ=ティルミズィー(1970)アッ=ダーリミー(543)。、アッ=スィルスィラト・アッ=サヒーハ(946)参照。文章はアッ=ティルミズィーのもの。
[3] サヒーフ・アル=ブハーリー(6537)、サヒーフ・ムスリム(2876)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[4] サヒーフ・アル=ブハーリー(4729)、サヒーフ・ムスリム(2785)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[5] 訳者注:「8.イーマーンとイーマーンの諸特質」の項参照。
[6] サヒーフ・ムスリム(2808)。