協業
12-協業
● 協業とは:何らかの実現、あるいは行動において複数の者が協同することです。
● 協業が定められたことに潜む英知:
協業はイスラームの美点の1つです。
そして誠実さと信頼性に基づいた協業は、祝福と財産の増加をもたらす原因の1つでもあります。また特に工業計画や建設事業、農商分野などにおける諸々の事業など、個人の力では及ばないような大きな計画などにおいて、共同体はこの協業を必要としているのです。
● 協業の法的位置づけ:
協業は契約の相手がムスリムであるかどうかを問わず、合法な契約です。但し非ムスリムと協業する時には、非ムスリムがムスリムの協業者をよそにリバー[1]や詐欺、酒類や豚肉や偶像などを取り扱う非合法な商売取引をしないようにするため、彼が単独で勝手なことをしないよう条件付けるようにします。
至高のアッラーは仰られました:-そして実に多くの(財産における)協業者たちは、互いに違反し合っている。但し信仰して正しい行いに勤める者たちは別だが、彼らは稀少である。,(クルアーン38:24)
● 協業の種類:
協業には2種類あります:
1-所有における協業:これは不動産や工場、車両などの共同所有に挙げられるように、財産における共通の利益のために複数の者が協業することを指します。この場合、協業者たちは他の協業者の許可なしに勝手に共同所有物を処分したりしてはなりません。もしそのようなことが発生したら、その場合はその者‐つまり他の協業者の許可を得ずに勝手に共同所有物を処分してしまった者‐の取り分だけを処分したものと見なします。但し他の協業者が彼の行いを許した場合は、その共同所有物全てが処分されたことと見なされます。
2-契約における協業:これは売買取引や賃貸など、行為における協業のことです。これは更に何種類かに区分されます:
① 提示的協業:これは例えば複数の者がそれでもって共に働くために、互いの体と財産において‐その割合が同じであるかどうかは問わず‐協業することです。あるいは実際に体を使って労働するのが協業者の内の一部、または片方であっても問題はありませんが、その場合はそうしない者よりもより多くの利益を得ます。また資本は金銭であれ、あるいはそれに相当する物品であれ、明確に知られていなければなりません。また協業して仕事した結果の損得に関しては、前もって互いの了承のもとに条件付けた共同出費額によって配分されます。
② 投機的協業:これは協業者の一方が資本金を提供し、もう一方がそれを運営する形の協業です。それによって生じた利益は50:50、あるいは70:30など、前もって互いの了承のもとに明確に定められた分配率に基づいて配分されます。尚資本金の運用後の損失は利益から補填され、資本を運営する側の協業者は損失に関する責任を負いません。そしてもし資本が何らかの被害に遭った場合、資本運営者がそこにおいて何らかの義務の遂行をおろそかにしたりせず、またすべきではないことも行ったりはしなかった限りにおいて、彼がそれを保障する責任はありません。資本運営者は資本に関しては信託を受けた者であり、その運営に関しては代理者であり、その仕事によって報酬を得、利益の配当を受ける者なのです。
③ 信望的協業:これは信用や地位の高い複数の者が資本金なしに後払いで何かを購入し、それを運営する形の協業です。利益は協業者の間で分配し、また彼らは互いの代理者かつ保証人となります。また所有物に関しては前もって条件付けた通りの比率に沿ったものとなり、損失はその比率に基づいて計算されます。そして利益に関しては、前もって互いの了承のもとに定められた条件によって分配されます。
④ 身体的協業:これはあらゆる合法的職業において、複数の者が体を用いて共同作業する形の協業です。その協業によってアッラーが彼らに授けられたものは、前もって互いが了承した条件に沿って分配されます。
⑤ 自由協業:これは全ての協業者が、売買などあらゆる形の協業における財的・身体的行為を行うことの出来る形の協業です。これは上記の4つの協業が総合されたものであり、利益は前もって定めた条件に、そして損失はその協業において各協業者が所有する比率に基づいて計算されます。
● 協業の利益:
提示的協業と投機的協業、信望的協業と身体的協業は財産を増加させ、共同体を益し、公正を実現することにおいて最善の手段の1つと見なされます。
提示的協業は全ての協業者から資本と労働が提供され、投機的協業においては一方から資本が、そしてもう片方からは労働が提供されます。また身体的協業においては全ての協業者から労働が提供され、そして信望的協業は協業者たちがその信望や地位によって得るところの物によって成されるのです。
● このような協業や社会法は、不正や他人の財産を偽って貪るところのリバーを必要とはせず、合法的範囲における収入の枠を広げてくれます。イスラーム法は合法的な形において、人間が単独で、あるいは共同で収益を得ることを合法としたのです。
● 他人の名義を商売に用いることに関して:
例えばある外国企業がある国の著名な国民と、その名義や知名度を利用することで合意したとします。そしてその企業がその者にいかなる資本や労働の提供も求めることなく、ただ名義の利用のために資本金や利益からの一部を彼に報酬として支払うことを了承したとします。このような行いは非合法であり、この契約自体有効ではありません。というのもこのようなことには嘘偽りやガラル[2]、害悪が存在するからであり、そしてこの項で示した協業の数々はこのような行いを不要とするからです。